母との濃密な期間を終えて

私が実家から自宅に帰ってきて2週間ほど経ち、なんとか通常の暮らしに戻って落ち着いた。そして、ふと母との最後のやり取りを思い出しては胸が熱くなる。

 

前にも書いているように私と母とのつながりは強く、それは確執ともとれるくらいのものだ。私は、ずっとそれで苦しんできて自分なりに心の学びを行い、もう大丈夫という感覚でいた。しかし、それは自分だけのものなので片手落ちだったのだろう、だから今回の期間が用意されていたのだと思う。いや、もしかしたら自分で無意識のうちにそれを望んでいたのかもしれない。

そして、実際に母との暮らしの中でお互いに話し合い、ご飯を食べて、介護して、を通じて思いがけない母の反応に翻弄されまくった私は、まさにこの学びの最後の試験を受けているような感じだった。

 

さて、私は今まで苦労してやってきたことがこの試験でパスして報われるのか、全てが水泡に帰すことになってしまうのか。重大な局面を迎え、もう最後は全てを受け入れるだけだ、と私は観念した。

いよいよ、私が帰る時になり母に「ハグしよう~」と両手を広げると、母は椅子からゆっくり立ち上がって片手を私の背中にまわし、ポンポンポンと優しくタッチしてくれた。その瞬間、母の手から温かいものが私の中に流れ愛で満たされた感覚になった。そして、私は親の子どもに対する深い深い無償の愛とは、これだと解った。

 

母は、すごく心配性で何かと悪い方にばかり考えてしまう性分なので、子どもに対しても度を過ぎるくらいの心配をする。親が子ども心配をするのは当たり前のことだが、し過ぎるとそれは心配という名の攻撃になってしまう恐れがある。残念ながら親はそれに気付かない、子どもはとても苦しんでいる、という関係性が作られてしまう。これは、悲しいことに親の方に悪気がないので子どもは辛い思いをする。

 

今回のことで解ったことは、親子間でお互いを思う気持ちや表現の仕方に大きな差があるだけなのだ。すると、どうしても相容れなくなってしまい、ボタンの掛け違がいやずれた歯車のように何もかもうまくいかず、お互いが苦しくなってしまう。だから、コトの始まりを丁寧に探って相手の立場にたって視点を変えると大事なものが見えてくる、と私なりに思えた濃密な期間だった。